リストと残響

本・食・思・暴

2024年10月前半に読んだ本

・冷戦後に仮想敵の存在が弱くなった結果、効率化の名の下に予算が削減されていった末の911テロ。そして以降の対テロ戦争としてのアフガン戦争・イラク戦争のリソースとしての民間軍事会社の位置付けの説明が分かりやすかった。

・会社組織としてはブラックウォーターとワグネルの話が中心になっていた。

・なんとなくエキセントリックな内容を予想していたけど、意外と地味な感じだったけど面白かった。少し前に読んだ「コンビニ人間」の方がクレイジーな印象。

・家族の介護の中で、筋トレ(と自慰トレ)をした主人公が、他者を強い肉体・弱い肉体として眺めるくだりは分かる気がする。

・欲望(肉体)と言葉(理性)は一致していない、というのが読んでて感じたテーマ。主人公の祖父も彼女も、おそらく主人公も言っている内容が本人の本音(欲望)を表していないし、それに無自覚であり自覚的であるというのが一周回って現代的なのだろう。

・冒頭の2023年狛江事件から始まる闇バイトの話。いわゆる今流行りの闇バイトとハングレにフォーカスした内容で、あくまで現在の空気感を解説しているような内容。

・著者の経歴(犯罪社会学とか保護司)ゆえか、謎の証言・事例集が挿入されていて、新書はよくこういう事がある。

・著者が実話ナックルズの元編集長で、↑の「闇バイト」と同じ材料を扱っているんだけど、視点と調理方法が全然違っている。たとえば五菱会事件とか両方の本に出てくるけど、掘り下げ方が全然違っていたり。

・三茶抗争(というか三茶愚連隊)とか、自分が聞いたことのあるキーワードが出てきてビックリした。

・タイトルの通り、こっちの本は総会屋・ヤミ金とかのヤクザのシノギあたりからの特殊詐欺の系譜として、今は振り込め詐欺・闇バイトになっているという位置付け。2023年狛江事件に端を発するルフィグループなんかは、アウトローたちの中では嘲笑の的と書いているのが面白い。

・恋愛小説じゃないと思っていたら嘘になるけど、読んだら恋愛小説の連作短編だった。小学館はずっとこの路線続けているんだなと感心する。

・各短編ごとに主役が変わるのは良い構成。結果としてミスリードになったけど、後付けの設定だろうなあという描写がいくつかあった。そこまで深く描写してないだけかもしれないが。

・感覚は令和なので、バイト先の爺さんを警戒してスマホに手を伸ばす女子高生とか、ある意味リアリティがあり好感が持てるけど、そんな中で生まれる人間関係はあるのだろうかという物語上のリアリティが薄くなってる気もする。

・未読のシリーズが、エルメロイ事件簿シリーズに続いて、ついに文庫化していたので読んだ。初見のはずの登場人物たちに既視感を覚えるのはFGOと「Fate/strange Fake」のせいだろう。

・型月知らん人には全く分からん話だけど、Fate/Protptype(通称、旧Fate)という本編未発表のリメイク作の前日譚というメタな作品で、サブタイトルの通り、断片的なエピソードで構成されているっぽい。

・何かしらでFateシリーズを知っている人には面白いのでは。