リストと残響

本・食・思・暴

2026年7月8月に読んだ本⑤

・孔子自身の来歴と儒教の起こりから変遷を解説した新書。儒家・儒教を巡る動きが分かりやすく説明されていて、自分のような初心者にも分かりやすかった。

・月村了衛。またテイストの違う作品ですごいという感想が品切れになる。今回は一人称独白の手記スタイルで、今までの月村作品にない味。

・ネタ元はアレかあと途中から気付いて(ネタバレになるので書かないが)、手紙の意図がだんだんと分かってくるのはホラーよりもホラーだ。

・現代における普通と底辺の境目という意味がタイトルにもあるのかな。現代の「地下室の手記」っぽさがある。

普通の底

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・前から読みたかった「孫子」の原典を読んだ。中公クラシックス版。冒頭に簡単な解説もついていて、現代語訳もあったが、やはりこれ単体だけだと読みにくさがあった。

・事前に予習過去記事)しておいて良かった。最初にこの本を読んでいたら、多分読みにくさが先に来て、あまり頭に入ってこなかったと思う。

・少し前に話題になっていた気がする。ヘッジファンド界隈では有名な人らしいけど知らない。著者の半生とノウハウの自伝的な内容。2024年の本。

・「非伝統的情報源」のくだりはなるほどと納得。他がアクセスできない、アクセスしようとしない情報が金儲けの第一歩というのは良い話だ。古巣の野村證券を直接悪くは言ってはいないけど、以前はひどかったけど今は~~の反語文脈でチクチクディスっているのは面白い。

・ちゃんと理解はできていいけど、PBRはあまり参考にならない、ネットキャッシュ比率とキャッシュニュートラルPERに注目、ただし金利がほぼゼロで固定資産を無視しているので設備投資のタイミングは考慮されていない、あたりは大事そうなのでメモ。

2026年7月8月に読んだ本④

・月村了衛。系統としては最近読んだ「悪の五輪」っぽさがある。ロッキード事件、東芝機械ココム違反事件、ソ連崩壊、オウム真理教、金正男事件などの昭和と平成の大事件を題材にしつつ、裏で暗躍する公安と警察、アメリカ・ロシア・北朝鮮の工作員が暗躍したりみたいな話で面白かった。

・田中角栄が一応軸になっているようでそこまでもなかったり、公安と諜報機関から見た昭和と平成の総括みたいな話だった。エルロイの「アメリカン・タブロイド」っぽさも感じた。

・「孫子」を読もうと思ってその予習用に読んでみた。前知識はほぼないので新鮮で面白かった。作者候補が2名いる説とか、魏の曹操が注釈つけたもの(校勘)が一般的に広まっているとか、全体的に解説が分かりやすくて当たりの新書だった。

・三宅香帆の本はたぶん2冊目。古典から現代までの名作の読み方紹介と見せかけた作者の作品語り。確かに読み方の技も紹介されているけど、ああ確かにと納得(実感)するものばかりで、そういう意味では新鮮味は薄かった。読み物としては面白いのに変わりはないけれど。

・この作者の初読書は「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」で、それと比べると文章が全体的に若い。大学生のミニコミ誌とかブログみたいなノリ。読書の敷居を下げる意図もあるだろうから、戦略的にやってる感じはある。

・一番印象に残ったのは「青年漫画として読む!」と言いながら、その例として「こち亀」の日暮さんみたいに・・・とか言い出しておいおいこち亀エアプかァと思ったけど、対オッサン・対男子のでかい釣り針が見えた気がした。あえてわざと、やっとるなと思った。ちょっと隙を作って語らせたがり、ツッコませようとしているな、俺には理解(わかる)!と思った。

・月村了衛。タイトルは少し捻っていて、ハニートラップを巡る日中スパイもののコメディ。こんな作風でも書けるのかと改めて作者の幅広さに何度も感心する。

・シリーズ最新刊。今回は、前作「0.6」以降の展開であるジオルグの死やかつての仲間との決別が描かれているであろう0.7と0.8を飛ばして、シリーズ1作目の「されど罪人は竜と踊る1」に連なる時間軸の0.9巻だ。

・ジオルグ高弟が出てきたりしつつ、初期の頃の短編集めいた味わいで良かった。あとジヴとの馴れ初めも入っていてファンにはただただ嬉しい一冊と言える。

2026年7月8月に読んだ本③

・シリーズ最新作。何だかんだでもう10年くらい連載している気がしているけど、今巻でようやくシルヴィア殺害の真相が明らかになったので、話が割と前進したように思う。あと山程いたキャラ達が結構淘汰されてきたので、各勢力の軸と構図が見えてきたのもある。

・P238の「ソンビ」はおそらく「ゾンビ」の誤記。

・面白そうなタイトルだと思って読んだら、期待以上に面白かった。日本の難読地名の由来について考察している本。全体的な特徴として、よく言われていそうな言葉遊び・語呂合わせ的な由来(理由)、つまり伝承が残っているからその地名と言う安易な考えを警戒していて「どちらかと言えば、その地名から伝承をこじつけたのではないか」というスタンス。

・昔の地図からその地域の地形や地名の変遷を追いかけたり、日本全国に存在する同一の地名や同音とその派生と思われる地名・地形からも検証しているのが信頼できる。一部うーんそうかな?というのもあるが、主張とスタンスが一貫しているので納得感はある。

・「日下を~」の方は一つのテーマを掘り下げていった作りになっていて、こちらも面白かった。

・月村了衛の中では割と初期めの作品。学校×半グレ×先生な王道的な展開のアクション小説。伏線が分かりやすい教頭、内ゲバと裏切りでどんどん登場人物が整理されていったりと粗削りな感じがありつつも、そこも含めて良かった。他作品ではなかった( )による補足説明があったのは印象に残った。

・こういうシンプルな構成でプロもアマも色々な作家が書けばいいと思う。試金石的な意味で、その作家の持ち味が分かりやすくなる気がする。来年2027年に実写映画化(広瀬アリス主演のアクション映画)するらしい。

・タイトルの通り「王様ランキング」がバズって商業出版(単行本化)するくらいまでを描いた作者によるコミックエッセイ。

・ちょうどバズっている時期に最新話くらいまでweb連載で読んだ覚えはあるので、その裏側では色々と紆余曲折があったんだなと思った。最近の連載は残念ながら追えていないので、また読んでみようかなと思った。

2026年7月8月に読んだ本②

・ポプラ新書。チョコレートを視点にした世界史解説的な本。世界史と言ってもチョコ―レートを通してなので、スペイン・イギリス・フランスのヨーロッパとキリスト教辺りの流れがコンパクトに語られている。奴隷に関してはほとんど触れられていなかった。

・最後の章だけはそれまでの雰囲気から打って変わって、現地見学レポートみたいな内容になり、チョコレート製品で有名なバン・ホーデン、ネスレ、リンツ、ゴディバなど取材協力したらしい企業が出てきて終わった。

・プロのポーカープレイヤー(木原直哉)と金融アナリスト(エミン・ユルマズ)の対談形式の本。2024年の本なので、日経平均4万円突破!とか言っていて、今や2026年には7万円突破していてヤバし。

・木原さんのポーカープレイヤー的な視点が面白い。対談相手がコメントしているように、一貫した投資スタイルと考え。それと関係あるのかないのか対談相手(エミン)とことごとく噛み合っていないのが面白い。エッジを出している人だからこそ、そりゃ評論家タイプとは合わないよなあと納得。

・「グラップラー刃牙」の主人公(範馬刃牙)のモデルとも言われる格闘家の自伝的な本。1984年頃の修斗からシュートボクシング、グレイシー柔術、K1時代などの総合格闘技時代の歴史と回顧録が前半に綴られて、後半は引退後に学んだ柳生心眼流とか技術的な話が多い印象。

・ちょっとスピっぽく「感謝」「縁」というワードが多用されている部分もあった。あと8章のページの角のヘッダー(見出し?)が5章になっていた(誤植)。

誰も知らない達人術

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・前から気になっていた本。独裁的な管理組合VS住民運動の激動のルポ。タイトルや前評判から抱いていたファンキーさはほとんどなく、地味な事務作業だけが淡々と描写(記録)されていた。確かに劇的な展開もあったけど、全体的な静けさに呑まれた。ひとつの決着がついた、このマンションの未来がどうなるかは、新たな権力が誕生するのか、秩序はどのように維持されていくのか、個人的には気になる。

・月村了衛。企業モノで、「奈落で踊れ」「暗鬼夜行」あたりの空気感を持つ小説。企業モノだけど対立派閥との政治があり、妨害と暗躍があり、月村作品としての味付けは面白い。展開とオチはイマイチな反面、読後感は珍しく良い感じ。良い感じだからこそイマイチと感じているのかもしれないが。

2026年7月8月に読んだ本①

・チャック・パラニュークの新刊。タイトルの通り、小説ではなく創作ノウハウ本だけど、新刊が出るだけ嬉しい。自身の伝説的短編「Guts」(Hauntedに収録の短編で、邦題「はらわた」として、昔ミステリマガジンに掲載されていた)についてエピソードを語っているのは個人的に熱い。

・自身の未翻訳の短編や長編(DiaryHauntedとか)についてもガンガン言及していて、期待していいんだな?期待するぞ?と思った。

・新川帆立、講談社から出したシリーズ1作目。タイトルから競売のイメージがあったが、公正取引委員会の職員が主人公だった。他の作品でもそうだったけど、敵側(?)のディティールが細かいというか解像度が高い。悪いなりの義と理がある感じ。それに対して主人公側はベタでドライな独特感。

・シリーズ2作目。前作から数ヶ月後という時系列。相変わらずヴィラン側の掘り下げというか、登場人物の両面性の描き方が独特の味。そして、主人公サイドは淡々とロジカルで感情はあまり表に出てこない感じなのも味。

・終盤で唐突に、勝負の因縁が始まって面白くなってきたけど、今作以降のシリーズ作が出ていないという残念さ。剣持麗子シリーズもそうだけど、シリーズ打ち切り的な感じで設定詰め込み的に書かれたのだろうか。両シリーズとも映像化やコミカライズもされているのに。

・月刊「秘伝」の連載をまとめたもの。作者はNHK番組の「武のKAMIWAZA」にも出ていた人のようだ。ムエタイ、小野一刀流、散打などの色々な武術の交差法(相手の攻めを押さえてこちらの攻めを当てるカウンター的な技法)の技法が写真付きで解説されていて興味深い。後半の脳波のくだりはよく分からなかったが、色々とやってるんだなとは思った。

・月村了衛。昭和の東京オリンピックの時代を巡る×映画×ヤクザみたいな話。実在の映画監督や政治家の実名がピョンピョン出てきたりしていて、参考文献は多めの小説だった。

・オリンピック映画の監督をテーマにしつつ戦後の葛藤や、映画とテレビ、ヤクザと政治や宗教、と古きものと新しいものの対比も重ねて面白く読ませるのは完全に作者の手腕だ。

村上春樹の新刊「夏帆」を読んだ

 村上春樹の「夏帆」を読んだ。前作「街とその不確かな壁」から約3年ぶりの新刊だ。2024年頃に朗読用に書き下ろされた短編がベースになっているらしい。

夏帆―The Tale of KAHO―

 前の記事で危惧していたよりも面白かった。あらすじとか、女性主人公とかで色々と危惧していた要素はなかった。本当に、なかった。びっくりするくらい。前情報で知ったあらすじとかほぼほぼ虚無だった。

 だからと言って村上春樹らしさがないわけじゃない。アリクイ夫婦とか往年(ネズミとか羊男とか初期作の頃)の春樹っぽさがあり懐かしい。やれやれ、そうかもしれないしそうでないかもしれない、とか所々の描写でハルキポイントを押さえているけどつまらない。何か村上春樹のモノマネ感がある。おい、本人だぞ!それはそう。村上春樹がハルキポイント100点を取ることはできない現実。

 今回は女性主人公だったせいか、いつものメタファ(父殺しとか)は形を変えていて、形を変えたことでしっくり来ない感じになっていて、このしっくりこなさが最近の村上春樹らしさって感じだ。

 まあ前作よりバランスは良いと思う。前作なら絵本世界にもっと寄っていたりして、かったるかったと思う。

 

 

村上春樹「街とその不確かな壁」の感想。あるいは「夏帆」のための復習

2026年7月に村上春樹の新刊「夏帆―The Tale of KAHO―」が出た。とりあえずは読むつもりだが、その事前の心構えとして、前作「街とその不確かな壁」(2023年)の感想を引っ張り出してみた。確か読んだ時期は発売した年なので、今から約3年前の2023年頃の感想である。

騎士団長殺し」(2017年)から数年ぶりの新刊だが、不思議と感想を言っている人が周囲で誰もいなかった(観測できなかった)。自身の環境や人間関係の変化とか、SNSの使い方とかアフターコロナなんかの社会の変化もあるんだろうけど、単純に時代の流れだと思う。若い人はそもそも村上春樹なんか読まないんじゃないのかな、そもそも興味もないでしょという印象を勝手に抱いている。それは「海辺のカフカ」「アフターダーク」「1Q84」「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」あたりをリアルタイムで追いかけていた自分の実感でもある。

 物語自体は、カフカ以降の手癖感はあるなあと思いながら、でもリーダビリティは高くストレスなく読めたけど、フッと終わった。また、1Q84みたく続きがあるタイプか?と思ったけど、珍しく作者のあとがきがあって、どうやら過去作品のリメイクに近い作りらしくて、まあ読んでいた感じた良い部分とうーんという部分の両方で納得はした。

 村上春樹から魔法は失われたことを確信できた作品で、村上春樹自身が魔法になったのだと確信した。今後も新刊が出たら読むんだろうけど、もう村上春樹を読みに行くような感じなのだろうと思う。

 

 改めて前作の当時の感想を書き起こした上で読んでみようと思う。